令和版白い巨塔とはなんだったのか?

唐沢版白い巨塔の愛を綴ったので、令和版も何かしら感想を残さないとなと思い早二週間が経ちました。
どうやってまとめようかな~と思い、結局うまくまとまらなかったのでダラダラと所感を書きますね。
9割がた批判であり前作懐古であり上から目線です。異論は認めない。

 

財前=悪 里見=善という構造

まずは圧倒的に足りない身長。こればかりは主役が決まった時から言われていたので詳細は書かない。
次に、全体として悪役に仕立てられた財前五郎には強烈に違和感を感じた。
唐沢版白い巨塔の時にはクラスの女子が財前派か里見派かで二分になるほどに財前はチャーミングで愛される要素もたくさんあったのだ。
里見をリスペクトする姿や、裁判で倒れる直前のシーン、最期のシーンなんかはその最たるかなあと思います。
それが今回は要所要所で岡田財前の悪そうなニヤケ顔がアップになったり、死に向かいご乱心するシーンなんかは愛すべき五郎ちゃんじゃなかった。
Twitterなんかで今作が初見っぽい人も一部、財前かっこいい!みたいなことを言っていたけれども一体どこでそう思ったのか問いただしたいくらいだった。(岡田君の顔かな?)
キャッチコピーに「命か?権力か?」などと安直な文言があったけれども、そんな単純な世界じゃないんだよ白い巨塔は。
同じく財前・里見をそれぞれ善か?悪か?なんて単純に分けることも出来るはずがないのに、5話とも一貫してその姿勢が崩されなかった。
そして圧倒的に足りない身長。里見役の松山ケンイチがそれなりに高く、東教授や鵜飼教授も長身だったため岡田財前の低身長が際立った。
とはいえ、松山ケンイチだって完璧なわけじゃなくて、登場のシーンからリュックを背負った研修医ですか?みたいな雰囲気で開始10分で見続けるか悩んだほどだ。
江口里見の「なぁ財前」という実直さや重みのない軽々とした里見になってしまったことが残念でならない。
しかし松山ケンイチさん、結構かこの作品を研究されただろうなあというのだけは伝わってきた。が、いかんせん本人の資質と里見が合わなかった。
そして圧倒的に足りない身長。後述する女性陣が岡田君の身長のバランスを考慮して選択肢が狭まってしまったのでは?とも思い、財前の身長は大事だと改めて思った。

 

完全に役に相応しくない財前を取り巻く女性たち

もしかして??女子医大中退の設定をなくしたのか??と思うほどに頭の悪そうなケイ子には驚きを隠せませんでした。(公式を見ると設定は生きているらしい)
あといろんな人が感想で書いていたけれども、口調がブルゾンちえみ。それに気付いてからはブルゾンちえみにしか聞こえなくなりました。
上記に加えて若すぎることもあり、無知な小娘が生意気なことを財前に言っているという印象が最後まで抜けきらなかった。
おまけにお店でお客として来ているときに財前を下げるようなことを偉そうに言うのはホステスとしての品位にも欠けているように思いました。
そして駆け足な作品のわりに無駄にラブシーンが多かった。そのラブシーンもなんというか財前がキャバ嬢に熱を上げている性欲おじさんのようで、恥ずかしくて見ていられなかった。
前作の黒木瞳は財前を母親の様に包み込み、時に厳しいことを言い、手の上で転がし、という完ぺきな医大中退のホステスで愛人を演じていました。
ケイ子には母性、知性、品性が欠かせないのにどれ一つ及第点に達しないただの美人なキャバ嬢みたいになってしまい本当に残念だった。
ラブシーンが多めなことからも、ケイ子を重要視していたに違いないのにこんなにもチャラチャラとした人物にしたテレ朝の罪は重い。

夏帆もお手伝いさんですか?と思うほどに華やかさや金持ちで甘やかされて育った様子が一切なかった。女性自らワインを注ぐのも貧乏っぽくてしょうがなかった。
姪っ子ですか?というほどに若く見えるし(実際若い)
教授夫人としての威厳も全く感じられず、くれない会のシーンは少なかったものの前作並みにあったらひとりだけ子供が混ざってますよ?となっていたと思う。
あと個人的には若村麻由美が東教授宅にパンのバスケットを持っていくシーンが背景含めてとても好きだったけれども、あれは夏帆には勤まらないだろう。
財前の最期もあれほどの貫禄、威厳、覚悟は感じられなかった……。

そして本妻VS愛人のような単純な構造としてしまったことも白けてしまった。そんな単純な構造ではない。
上記の財前=悪、にも通ずるけれども今作は物事をやたら単純化する傾向にあった。
とても安直な三角関係風に仕立て上げ、複雑で細やかな要素を一切排除していたように思える。
これは脚本が悪いのだとは思うけれども、役者の実力からこうせざるを得なかったようにも思うんだよね、個人的には。

 

前作以上だったのは佐々木夫妻だけ

良かったところも書かなくては。

前作のかたせ梨乃さんもしつこさといい、苦労人っぽさといい完ぺきだったと思うのですが、さすがのお二人ですね。特に死に際した佐々木さんの演技、裁判中の奥様の演技が素晴らしかった。このお二方だけ別のドラマを演じているようでした。


前作同等の面々

斎藤工の関口先生は経緯こそちょっと違えど、かなり前作を研究したのであろうと思えました。
まあ上川隆也斎藤工って見た目の系統も近いよね。ただまあ、斎藤工がこれまで築いてきたイメージとは少し異なるので無理矢理見た目で選びましたと言われても仕方なさそうなのが惜しい。
満島新之助の柳原先生はかなり良かった。満島新之助では柳原先生の不器用さは出せないのでは?と少し心配していたけれども、満島家の血ってすごいな。演劇モンスターだよ……。
不器用で本来は実直で、恵まれない家庭で育ち、板挟みにあって苦悩する。そんな複雑な役をよく演じていたと思います。でもやはり伊藤英明あってこその演技だったと思う。伊藤英明の柳原は偉大。

 

どうしても言わせてほしいこと

大河内教授に岸部一徳さんはありえない。テレ朝の医療ドラマですでに強烈な役柄を演じているのにもかかわらず、真逆の役に設定するなんて、キャスティングした人は大門未知子先生に頭を見てもらった方が良いのでは?

あんなにメロン持って小躍りしそうな大河内教授は見たくなかった。

 

演出とかその他のいろいろ

白い巨塔のロゴだけが妙に古い書体だったのが微妙。
音楽、ドクターXの音楽に繋がっても違和感がないくらい使いまわし感のあるものだった。(同じ音楽担当ではないみたいだけど)
CMに歯医者の岡田君が出てきたりして雰囲気をぶち壊していた。翌週の関ヶ原のCMもどうかと思うよ……。
直接関係ないと言われそうだけれども、5夜連続というリアタイ推奨のような放送をしているのであれば、
CM含めて作品であると考えてそのあたりの配慮もした方が良い。
制作陣の雑さや詰めの甘さ、作品への愛のなさがこのようなところに表れていると思う。
作品自体もお粗末、全体の構成としてもお粗末、この出来に満足している製作者はいるんでしょうか?

 

5話(10時間)なのだから仕方ないという擁護

10時間しか取れないのならば白い巨塔は不完全燃焼となることは分かっていたはず。そもそも10時間で白い巨塔をまとめようとしたことが失礼に当たる。
岡田財前はとてもじゃないけれどもステージⅣのがん患者には見えないほどに健康的な見た目をしていた。時間がなかったでは済まされない。
10時間ほどしかないのなら相棒の特別編なりドクターXの特別編なり、テレビ朝日の伝統的な作品で勝負した方が良かったのでは?と思った。
前と比べるなと言われても、多くの日本人から愛されている作品の威を借りて数を取ろうとしている番組なのだから比較されても仕方がないでしょう。
このテレビ局には白い巨塔という作品を愛しているスタッフは一人もいなかったんじゃない?原作・過去映像100回ずつ見直して出直してほしい。

 

おわりに

完全にリアタイすることは出来なかったのですが、なんとか完走した今年の白い巨塔。最初の10分見た時は絶望したわ。完走した自分を褒めてあげたい。

まだまだ書き足りないのだけどあっという間に3000文字超えちゃったからこのあたりで終わるよ。本当は東娘や財前義父にも言いたいことはあったけれども、書くのも面倒なくらいにダメだったので。

最後まで読んでくれた方、お疲れ様でした。


どうにもこうにも平成版が見たくなり、毎日ちまちま見ています。やっぱ財前五郎唐沢寿明が最高だな。
平成版を見たいと思う強烈な動機を与えてくださりありがとうございます、テレビ朝日
フジテレビさん、今から深夜にでも再放送すれば視聴率稼げると思いますよ。